松隈健太朗
Kentaro Matsukuma
"生きること、生きていること"という2つの同じ様で意味の異なるキーワードをテーマとして沸き起こるイメージを、多種多様な木の枝や幹や根を用いて造形し、それをもって何かの "いきものたち" の似姿としています。
木から現れた奇妙な "いきものたち" は、いつかどこかで見かけたような、ずっと前からよく知っていてとても親しみがあったような、けれど初めて出会うようでもある、気軽に誰とでも自由に交感できる開放的な存在になっていてほしいと思っていて、そこに私たちが生きてゆく上での普遍的価値を込められたらと願っています。
Using the two seemingly similar yet fundamentally different concepts of “living” and “being alive” as a central theme, I create forms inspired by the images that arise from this exploration. These forms are shaped using a diverse array of tree branches, trunks, and roots, embodying the likenesses of various “living creatures.”
These strange “creatures” born from wood evoke a sense of familiarity—as if you’ve seen them somewhere before, as if you’ve known them for a long time and feel a deep connection to them. Yet, at the same time, they present themselves as something entirely new, like meeting for the first time. I hope these beings can exist as open, approachable presences, freely connecting with anyone without hesitation. Through them, I aspire to convey a sense of universal value that resonates with the way we live our lives.
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松隈 健太朗 作品制作に寄せて
"生きること、生きていること"という2つの同じ様で意味の異なるキーワードをテーマとして沸き起こるイメージを、多種多様な木の枝や幹や根を用いて造形し、それをもって何かの "いきものたち" の似姿としています。
元来生きものである木は私たちと同じように生命活動を行なっています。
花や新芽や実をつけ、その活動によって私たちに季節ごとに彩りや香りや感触や味覚など、五感を通じて時の移ろいを知らせてくれます。
また、素材として木と触れ合っていても、年輪や枯れて腐った部位や途中で取れてしまった枝の痕跡である節など、生命の軌跡が刻まれた身体性を認めることができ、周囲の環境との関わり合いを含む生と死の有様を想像せずにはいられません。
そしてそれらの気づきは、私の生まれ育った日本という土地で古来より連綿と受け継がれてきた、多神教的な畏敬の念を込めた自然観へと結びつきながら、生きるということの普遍的本質を示唆しているのだと考えるようになっていきました。
そうした流れから、身体感覚を通じて得られる生きていることへの感触や実感と、普段暮らしの中で漠然と去来する生きることにまつわる様々な想いを、一見なんの変哲もない木の枝や幹や根に投影し、ごく素直にカタチを刻み込めるのではと直感し、自然に木という素材を選択したのだと思っています。
冒頭で触れた "生きることと生きていること" という2つの言葉について、前者はたとえば私が表現を通して心を豊かに過ごしていきたいといった願望や、他者をみた時にその人の生き様に感動を覚えたり、自己の中に落とし込んで生きる術や知恵として参考にしたりといった内面から発露することで、後者はそうした精神世界でのことではなく、呼吸や脈拍のように己の意志とは関係なく肉体そのものがその生命活動を支えるために絶えず行っていることを指しており、私たちはこの2つが並び立つことによって初めて自己の存在を自覚出来ているのではと考えています。
これは私たち人間に限らず生きとし生けるものの根幹をなす事実ではないかと思うのです。
それはあまりに普通で当たり前なことですが、同時にとてつもない奇跡のようなことでもあります。
その視点から眺める世界はどこをどう切り取ってみても奇跡の美で満たされています。
私たちはそれをどんな時も忘れてはならないし、困難に直面した時もそれを感じ取れていたなら、どのようなことでも正面から受け止められ、決して力づくで何かを捻じ曲げて改善したり発展しようなどとは考えないのではないでしょうか。
そんなことも制作しながらつらつらと考えています。
普段暮らしの中で、私たちの周りになんてことなく生えている木々やいきものたちの営みは勿論のこと、世界の成り立ちや宇宙の広がりなど、その全貌を知る由もなく、特別な意味や言葉を見つけられぬまま、ただ感じる気がするというそれだけを依代のようにしてそこに立ち現れ、どうしようもなく居てしまうことによって、生きていることにまつわる諸々のリアルを内包した得体の知れない何かを現したいと思っています。
木から現れた奇妙な "いきものたち" は、いつかどこかで見かけたような、ずっと前からよく知っていてとても親しみがあったような、けれど初めて出会うようでもある、気軽に誰とでも自由に交感できる開放的な存在になっていてほしいと思っていて、そこに私たちが生きてゆく上での普遍的価値を込められたらと願っています。
なぜなら、私たちいきものたちはそんな風に命を繋ぎながらこの世界に等しく存在して来ただけであるように思え、しかしそれは人智の及ばないシンプルな奇跡であり、いつも心のどこかに置いて大切にしてゆくべき普遍的価値だと思うからです。
2022年2月 松隈 健太朗
経歴
- 1968
- 和歌山県に生まれ茨城県取手市にて育つ
- 1992
- 東京藝術大学 美術学部 彫刻科 卒業
- 1994
- 東京藝術大学 大学院美術研究科 彫刻専攻 修了
- 千葉県流山市に住み「柏の葉アトリエ(柏市)」にて制作を開始する
- 2023.2
- 膵臓癌のため他界 享年55歳
履歴
個展
- 2010
グループ展
- 2006
- 2007
アートフェア
- 2012
受賞歴
- 2010
- 富士メタル大賞展 大賞(ギャラリーユニグラバス銀座館)
- 2017
- 第5回 Art in the office 2017 CCC AWARDS グランプリ受賞
コレクション
*戸澤政盛公(松岡藩主)2体 中山信吉公(水戸藩附家老)1体
参考文献
- 2004
- 「現代美術の断面」日韓2000~2009中期の現況 掲載 (京都国際芸術センター発行)
- 2018.11
- [Art Collectors'(アートコレクターズ)] 2018年 11月号 (生活の友社)
biography
- 1968
- born in Wakayama and lived in Ibaraki, Japan
- 1992
- B.A., the department of Sculpture, Tokyo University of the arts
- 1994
- M.A., Tokyo University of the arts
- Lives in Nagareyama City, Chiba Prefecture, and begins creating at “Kashiwa-no-ha Atelier” (located in Kashiwa City).
- 2023.2
- Passed away due to pancreatic cancer at the age of 55
curriculum vitae
solo exhibition
- 2002
- 2010
- 2012
- 2015
art fair
- 2012
awards
- 2010
- [FUJI METAL AWARD] Grand prix /Gallery Uniglavas Ginza-kan
- 2017
- 5th Art in the Office 2017 CCC AWARDS Grand Prize Winner
collections
references
- 2004
- 「Gendai Bijyutu no Danmen」Japan, Korea (KYOTO INTERNATIONAL ART CENTER)
- 2018.11
- [Art Collectors'] November 2018 issue (Seikatsu no Tomosha)